Amazonマーケットプレイス詐欺で騙された場合には税制面で考慮されるのか?
こんにちは、税理士の髙尾英樹です。
少し前に話題になった、Amazonマーケットプレイス詐欺、通称マケプレ詐欺というのがあります。
Amazonマーケットプレイスとは?
Amazonマーケットプレイスとは、商品などをAmazonではなく、Amazon以外の企業や個人の出品者がAmazonの場所を利用して販売しているサービスです。
中古の商品などもAmazonマーケットプレイスで多く販売されており、中古の商品の場合は品質に多少目をつぶれば定価よりも廉価で欲しい商品が手に入ることが多いです。
また、廃盤や絶版になった珍しい商品もマーケットプレイスで販売していることがあるので、私も普段からよく利用しております。
Amazonマーケットプレイス詐欺について
マーケットプレイス詐欺は、ほとんど使われていない販売者のアカウントになりすまし、一般的な商品価格より大幅に安い価格で出品し、購入されても実際には商品を発送せずに代金だけ受け取るという、現代ならではの騙されやすい詐欺の手法です。
Amazonマーケットプレイスでの出品には出品者の審査がほとんど行われずに出品できてしまうため、このような詐欺が行われてしまうようです。
この詐欺はネットニュースで一気に広がって問題が公に広まり、2017年4月末頃の出来事でしたが、私自身とても震撼させられたものです。
なぜなら、恥ずかしながら私自身もマーケットプレイスで趣味のソフトを購入し、詐欺に引っかかってしまったことがあるためです。
詐欺にあった場合の税金面での救済措置について
このAmazonマーケットプレイス詐欺、刑事的な側面はさておき、どうにか税金で救済はできないものでしょうか。
やはり、騙された人間が悪いという結論に落ち着くのでしょうか?
所得税には、雑損控除という控除があります。
雑損控除の説明は、国税庁のホームページでは、この様に書かれています。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1110.htm
災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等には、一定の金額の所得控除を受けることができます。
所得控除は「1年の儲けからの控除」なので、つまり税金が安くなるということです。
実際の税金面での計算方法は国税庁のページをご参照下さい。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1110.htm
これは「給与所得者と還付申告」の項目のタックスアンサーにも記載してある通り、サラリーマンでも適用されます。
つまり今回私の場合に当てはめますと、業務用の会計ソフトだけではなく、仕事に関係がない趣味のソフトも対象となる、ということです。
それでは、Amazonマーケットプレイス詐欺の損害額を雑損控除しましょう!と行きたい所ですが、そうはいきません。
なぜでしょうか?
国税不服審判所の判例にこのような記載があります。
http://www.kfs.go.jp/service/MP/02/0701000000.html
いわゆる振り込め詐欺の被害に遭い、だまし取られた金額分の損失は、雑損控除の対象となる災害又は盗難若しくは横領による損失には当たらないとした事例
判例ですので分かりにくいですが、振り込め詐欺の損害は、法的に見て「災害」でも「盗難」でも「横領」でもないので雑損控除はできない、という判例の内容です。
この判例が出たのは表記の通り平成23年ですが、これをもって、広義に詐欺全般が雑損控除の対象に当たらないと解釈されています。
「盗難」も「詐欺」も意味合いとしては大して変わらないように思うかもしれませんが、法律上の扱いは大きく異なるということです。
やはり騙された人間が悪いのでしょうか?
また、詐欺だけでなく強迫や紛失による損失も雑損控除の対象とならないこととされています。
私のAmazonマーケットプレイス詐欺については、保証が利いていた上に、保証を申請する前に、「アカウントの調整」という項目をもってして、Amazonギフト券として全額還付されました。
実質的に騙されたお金が戻ってきたようなものですね。
通常生活していて、所得税の申告に雑損控除を使う局面は非常に少ないため、実際にこの種のお問い合わせを頂いたことがあります。
私も実際に雑損控除を申告で行ったことは1回しかありません。しかも雑損控除の申告には準備する書類が多岐にわたりました。
今回も勉強のために、「いざ雑損控除だ!」と思って、楽しみにしていたのですが、すぐにつまずいたというわけです。
法律は簡単な手引きやネットの解釈を鵜呑みにするのではなく、その前に必ず専門家にお問い合わせ下さい。