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演劇の実例から学ぶ手取り額と源泉徴収

こんにちは。税理士の髙尾英樹です。ご無沙汰しております。

前回のコラム掲載から現在まで、枚方青年会議所への参加、北大阪商工会議所会報誌への連載、自らのセミナーの開催、そして確定申告等、様々な活動を行っておりました。

その合間を縫って、私の大好きな芝居は定期的に観ておりますので、コラムを書けない言い訳には全くなりませんが、その中で税金についての理解が不十分なまま、税金の世界に手を付けてしまっている芝居がありました。

観劇しながら、日々勉強していくことはとても大切だと改めて思いました。

演劇と税金について

ただ、数多くの芝居のなかには、エミー賞候補になり、映画化もされた「エンロン」(もちろんあの有名なエンロン事件を題材にした作品です)などの秀作もあり、もちろん芝居の世界の人全員が税金のことを分かっていないというわけではありません。(エンロン事件の場合には税金よりも、お金やコンプライアンスについてですが)

普段に新聞やニュースに触れていない俳優が「株価」「キャピタルゲイン」「税務調査」などの単語を発した瞬間、「ああ、この人分かっていない」ということを、見ている側は思ってしまいますので、劇作家のみならず俳優も普段から様々なことに触れておかなければいけないのは事実ですね。

本当は、劇作家も演出家も俳優も、税金や経済のなかに身を置いていて、だからこそギャランティー(報酬)が発生するわけです。

しかし、そのシステムを彼らが理解するのは非常に大変です。

例えば、昨年から1年以上かけて、劇団☆新感線は「髑髏城の七人」という当たり芝居を、IHIステージアラウンド東京という、客席が360度稼働するという画期的な劇場で、5つのシリーズに割って上演しています。

舞台のことに何の興味もない人でも、この公演に多くのお金がかかっているのは、伝わるのではないでしょうか。

ですが、昨年秋に古田新太氏がテレビに出て笑福亭鶴瓶氏と対談した時、8月の手取り額が7万円だったことを明かしていました。

劇団☆新感線は大勢の俳優を抱えていますが、トップに君臨する俳優である古田氏ですらその金額となると、若手の俳優陣はどうしているのかと勝手に心配になります。

どうして、映像業界でも大活躍を見せる古田氏の手取り額が7万円になってしまうのでしょうか。

なぜ手取り額が減ってしまうのか?

それは、劇団による出演料のマージンの問題がありますが、芸能人の手取り額は全て89.79%(復興特別所得税計算済み)である、という「源泉徴収」の話があります。

古田氏は株式会社キューブに所属する「芸能人」です。

テレビ局や制作会社から株式会社キューブに古田氏の出演料が支払われる際には、株式会社キューブは法人ですから、源泉徴収はありません。(法人から法人への支払いは源泉徴収は発生しません)

株式会社キューブから古田氏に支払われる段階になって、いよいよ法人から芸能人個人への支払いが発生するので、源泉徴収が行われます。(法人から個人への支払いについて源泉徴収が発生します)

古田氏は俳優をとしている芸能人ですので、消費税8%分も加味されます。(「業」とは反復継続の意思をもって事業を行うこと)
実際には支払金額100%+消費税8%-源泉所得税10.21%=実質97.79%分で7万円となり、実際の支払金額総額は7万円÷0.9779=71,581円程度と予想されます。

マージンがいくらの割合かは分かりませんが、30万円程度かも知れません。

この「支払金額」がクセモノで、例えば連続ドラマにレギュラー出演していた場合、ドラマの放映1回毎に支払われるのか、それとも1クール全て終わった段階で支払われるのかによって、源泉徴収の額は変わります。

1回分の放送毎に支払われる金額が30万円であれば、税率は10.21%で済みますが、全て放送が終わった後に支払われる契約だった場合には、支払金額が優に100万円を超えるため、税率は10.21%から20.42%に跳ね上がります。

劇団公演に出演した場合には話はもっと厄介になります。

劇団員であるだけで、出演料からある程度のマージンとして金額が引かれていると想像されます。

したがって、劇団☆新感線から株式会社キューブに支払われている段階で1回目のマージンが差し引かれ、古田氏に支払われる段階で2回目のマージンが差し引かれ、源泉徴収も行われる、という支払い方をされます。

劇団公演にのみ出演していた場合、1ヶ月間ずっと出ずっぱりでも手取りの金額が7万円であることも理解できますね。

性善説と性悪説

源泉徴収が行われている狙いの中には、性善説と性悪説が混在しています。

本来、所得税とは申告納付が原則です。

先進国での税金は全て申告納付であるべきなのです(性善説)。

しかし、申告だけを信用していた場合、脱税が後を絶たないことになってしまいます(性悪説)。

そのため、源泉徴収を行うことにより、課税庁側が事前に税金を徴収し、1年後の確定申告でこれを精算するという制度を採っています。

税理士業界を始めとする士業もまた、芸能人である彼らと同じ税率で源泉徴収がなされています。

報酬手渡しの場合の源泉徴収について

報酬に関する源泉徴収が行われる場合は、昔は「手渡し」が多く、領収証も発行されず、通帳にも記帳されず、課税庁側が正確な金額が把握できないことがありました。

よくテレビでも、ドリフターズなどは、いかりや長介氏から各メンバーへの報酬の手渡しの話で揉めていたことが話題になっていました。

また、報酬手渡しで一番問題とされていたのがバーやキャバレーのホステスさんなのですが、芸能人の話題とは法令が異なりますので、この話題は次回以降に改めてお話します。

ここまで「芸能人のギャランティー」という言葉で簡単に書いてしまいましたが、税法上は「映画、演劇等の出演等の報酬又は料金」という名称になっています。

通達としては下記のページに記載されています。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/36/05.htm

国税庁の上記のページの204-25をご覧いただければ分かりますが、この報酬について源泉徴収の範囲から除かれているのは、芸妓さんにかなり直接的な形でチップを渡すような場合のみとなっています。

204-25 料理屋、旅館等において特定の客(団体客を含む。)の求めに応じ、日本舞踊、三味線等の伎芸をもって客に接し酒興を添えるために軽易な芸を披露した者(当該料理屋、旅館等に専属して芸を披露している者又は常時出演している者など専ら客に対して芸能の提供を行う者を除く。)に対し、その客が直接に又は当該料理屋、旅館等を通じて支払うその報酬又は料金は、法第204条第1項第5号に掲げる報酬又は料金に含まれないものとする。(昭63直6-7、直所3-8、平5課法8-2、課所4-6改正)

204-26では、「映画又は演劇関係の監修料」さらに「選曲料」まで源泉徴収の対象とされています。

204-26 令第320条第4項に規定する「映画若しくは演劇の製作、……編集」の報酬又は料金には、映画又は演劇関係の監修料(カット料)又は選曲料も含まれる。

劇団☆新感線は、劇作を中島かずき氏、演出をいのうえひでのり氏が行うのが通常ですので、いのうえ氏は「監修料」として源泉徴収されます。

中島氏は作家として「原稿料」が源泉徴収の対象となります(また異なる法令内の話になりますので、ホステスさんの話と同じく、別の回に解説します)。

今回の記事では私の大好きな演劇の分野を交えてお話させていただきました。

この話題は、現在行っているクリエイターさん向けのセミナーとリンクさせるつもりで書いておりますので、好評であることを願います。

それでは、また来月お会いしましょう。

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